前作となる『鋼の錬金術師』を連載していた『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)から出版社を越えて掲載誌を変えたことについて、ラジオ番組『オールナイトニッポンGOLD app10.jp』に作者の荒川が出演した時の話によると、いろんな雑誌や出版社からのお誘いがあった中で、『鋼の錬金術師』が連載中のころから、荒川のファンで荒川の元に通っていた『銀の匙』の担当編集者である坪内崇が、農業漫画を提案し、その中でサンデーの読者層の話をした際に、中高生がかなりの確率で、将来のことを気にしているというアンケート結果を聞き、ピンと来て「いけます」という話になったとのこと。
当時、サンデーの編集長であった縄田正樹は、『コミックナタリー』のインタビューにて「話の内容で他誌よりも『サンデー』を選んでもらえたんだと思います」と発言しており、前作とは違ったジャンルの話を描ける場だからこそ『サンデー』での連載を始めたという。
荒川は『鋼の錬金術師』連載中の2009年に、小学館企画でゆうきまさみと対談を行っており、この中で「獣医漫画とか農家漫画はあるけど、農業高校漫画はないから、そのうちやろうかなとか思って。」と語っている。このとき語られた自身の体験談と同様のエピソードが作中にも登場している。

荒川にとって初の週刊連載作品だが、他社・他誌での連載との並行、また、連載中に第二子・第三子を出産したこともあって、他の連載作品と比べて休載頻度が徐々に高くなっていき、2014年からは家族の療養のサポートも加わり、不定期連載の状態となった。その後、荒川の夫と子供も難病となり、休載が続いていたが、約1年5カ月ぶりに2019年49号にて連載を再開。その後、2019年52号にて連載を終了させた。
原作者は北海道にある酪農家の生まれで農業高校卒業生。作中には荒川の実際に経験したことが多く反映されている。作品の舞台となる大蝦夷農業高等学校は、帯広農業高等学校をモデルにしている。また荒川は自身の農業での実体験を題材としたエッセイ漫画『百姓貴族』(『月刊ウィングス』)を本作と並行して連載しており、本作と共通する話題が描かれることもある。
作品の累計発行部数は2012年4月の時点で、1 – 3巻合わせて250万部を突破した。また、2013年7月発行の第8巻にて累計1000万部を、2020年2月時点で累計1700万部を突破している。
受賞歴
「マンガ大賞2012」大賞
第3回「ブクログ大賞」マンガ部門大賞
第58回「小学館漫画賞」少年向け部門受賞
農林水産省主催「コンテンツ・アワード・オブ・ジャパン・フード・カルチャー2013」大賞

札幌の私立中学に通っていた八軒 勇吾は受験に失敗。学力競争と高圧的な父の数正から逃れるため中学の恩師白石の薦めで寮制の大蝦夷農業高等学校(通称、エゾノー)に進学する。寮の相部屋はクールなオタクの西川 一と食いしん坊の別府 太郎。実習中に子牛を追いかけ広い校内で迷子になった勇吾は馬で探しに来たクラスメイトの御影 アキに一目惚れしてしまう。
勇吾のクラスには、野球部投手で甲子園を目指す駒場 一郎、養鶏場の跡取り息子で劣等生の常盤 恵次、獣医師を目指すが血が苦手な相川 進之介、何事にもシビアでしっかり者の稲田 多摩子(タマコ)、チーズ好きでしたたかな性格の吉野 まゆみといった個性的な顔ぶれが揃っていた。農家の跡取り娘で馬好きが高じて馬術部に所属するアキも含め、それぞれ夢や将来の目的を抱いて入学していた。夢もビジョンもなく父から逃げるため入学した勇吾は彼らに引け目を感じてしまう。
授業のほとんどが実習で体力勝負。教師も面倒見がよく大らかな勇吾たちの担任桜木や、鶏舎を管理し労働の報酬に炊きたてご飯を用意する白樺、女軍曹だがノリが良く太っ腹な富士、そしてコロポックルのような校長と個性的。寮での生活はさながら収容所といった窮屈なもので勇吾は不慣れな環境に戸惑いながらも徐々に適応していく。ニワトリや豚、牛の世話をする農業高校で勇吾は普段自分が口にしているそうした家畜たちが置かれた厳しい現実をつきつけられる。産卵率の低いニワトリは精肉として処分され、手塩にかけて育てた豚たちはいずれ食肉となる。雄牛も産まれて間もなく去勢され、食肉となるべく肥育される。勇吾は「割り切れない思い」を抱えて葛藤し続けるため、周囲の反対に遭いながら子豚に「豚丼」と名付けて可愛がるのだった。
銀の匙 Silver Spoonはごく普通の学園寮生活をエゾノーという北海道の畜産農家等と密接にある学園が舞台背景であり、普通の青春なのだが酪農やチーズ、豚や牛や馬等がでてくる中で主人公の八軒が成長していく、とてもためになる物語である。八軒が飼っていた豚に「豚丼」と名付けたばかりに、妙な愛着が沸き、食べるのをためらってしまったり。。。食べるのに葛藤し、悩み、結局は食べて、命の大切さや大地の恵みを噛み締める。そんな普段体験出来ない事が目の前にある世界です。同級生とピザ窯を修理して文化祭でピザを売ったり、とても好評だったりとエゾノー学園と、寮は様々な規律があり大変なことが多いのですが。八軒を中心に笑顔が広がり苦楽を共にしていく中で登場人物各々のストーリーがあり、とても面白く楽しく読ませていただいたコミックの1つです。是非とも読んで欲しいですね。
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